タトゥーアフターケア


タトゥーとは?

●皮膚は表皮と真皮の二層でできていて、タトゥーは表皮の下にある真皮層に色素を埋めていくものである。
●すなわちタトゥーを入れる場合、表皮と真皮に傷がつく。
●表皮は下層から基底細胞層(図A-1)、有棘細胞層(図A-2)、顆粒層(図A-3)、角質層(図A-4)からできている。
●表皮の中にある基底細胞層は、分裂したあと角質層まで押し上げられ、アカとして落ちる。
●基底細胞層で分裂した細胞が、角質層まで押し上げられて剥がれるまでに28日かかる。
●真皮層は、コラーゲンというタンパク質繊維と繊維芽細胞などの細胞からできていて、毛細血管が網目のように走っている。
●真皮には触感、痛感などの知覚を司る神経が張り巡らされている。
A図からわかるように、タトゥーは真皮の浅い部分まで入った傷なのです。そこで次からはその浅い傷の治し方を説明していきます。




タトゥーをキレイに治す方法は?

1・タトゥーとは、基本的に“点状の傷”が付いたものである
●タトゥーとは、マシーンにしろ手彫りにしろ、皮膚に針を繰り返し刺すことで出来る“点状の傷の集合体”なのです。例えば転んだときに出来るすり傷のように、面で皮膚が削り取られるわけではないので、基本的に大量に出血することはありません。また、通常、点状の傷は48時間で閉鎖されるので、それ以降は出血することもありません。ちなみに、タトゥーのように傷口に色素が入っているものと、通常の傷口との治り方には差がないと考えてください。

2・身体にはもともと傷を自然に治す力がある!
●A図のように、きちんと真皮の浅い部分にタトゥーを入れていれば、傷付いたとしても身体は自力で治す力があり、浅い傷なら意外と簡単に治ってしまうのです。タトゥーに関わらず、すり傷などを負ってしまった場合、皮膚から半透明っぽい液体が出て来た経験があるでしょう。これは膿ではなく、これこそが浸出液と呼ばれる、まさに傷口を治そうと努力しているサイン。浸出液には白血球やリンパ球だけでなく、細胞の再生をうながす科学的伝達物質が含まれており、これがなければ皮膚は再生する力を失ってしまいます。

3・タトゥーのような浅い傷は“モイストヒーリング”で治すことをおすすめします!
●タトゥーの傷を治すためには、特別な薬による治療は必要ありません。なぜなら、先に書いたように身体には自分で傷を治そうとする力があるから。ただし、傷口を乾燥させるのではなく、適度な量のワセリンやグリセリンを塗って湿潤環境を保っておくことがおすすめです。通常、浅い傷はどんなに遅くても2週間以内には完治し、新しい皮膚が完成します。逆に2週間経ってもジクジクと浸出液が出ているような状態はおかしいと考えてください。タトゥーの傷以外にほかの原因があることも考えられるので、自己判断せず、すぐに皮膚科か形成外科で診断を受けましょう。

4・正常にタトゥーが治っているなら、抗生物質入りの軟膏は付けないほうが良い!
●抗生物質や軟膏は、あらゆる菌を殺す作用を持っています。同時に正常な細胞にもダメージを与えてしまい、傷の治癒を遅らせます。身体が元から持っている常在菌と呼ばれる菌群は、身体の抵抗力が落ちていない限り問題はありません。ですから、抗生物質を塗ったり飲んだりするよりも、真皮層を作り出すコラーゲンを錠剤で摂取したほうがよっぽど治りはキレイなのです。

5・血液を洗い流す程度のシャワーでOK!
●傷口に血が滲んでいる場合は、シャワーでキレイに洗い流しましょう。このとき注意することは、強い水圧のシャワーを使用しないこと。あまりに強い水圧のものだと、まれに色素が飛んでしまうことがあります。ただし、通常家庭で使用するシャワーなら心配はありません。また、血液がキレイに洗い流せればボディソープは使っても使わなくてもOK。施術後2、3日は傷口が熱を持っているので水や冷ためのぬるま湯で、傷口が落ちつく4、5日目からは血流を良くするために温水で洗うのが良いでしょう。



肌とタトゥーは自力で目を覚ます

6・カサブタの下は無菌状態。だから無理に取ってはいけない!
●分かりやすい例でいえば、ヤケドをしたときに傷口にプクッと水ぶくれができるでしょう。このとき、水ぶくれの下にある傷口は浸出液で満たされ、治る準備をしています。ですから、むやみに破ってしまうのは傷口を守っているカラを壊してしまうこと。カサブタも同じなのです。カサブタが落ち始めるのは4、5日〜1週間くらい。この時期にカサブタを引っ掻いて剥がしてしまうと、真皮層の深い部分に傷が付き、色素が飛んでしまうだけでなく、膿んでしまうこともあるので絶対にやめましょう。

7・治りが悪いと思われる場合は?
●タトゥーを入れたあと4、5日たっても傷口が異常に熱を持って赤く腫れていたり、皮膚がパンパンに張ってしまったり、化膿してしまったりした場合は注意しましょう。皮膚が腫れてしまったときは、真皮の奥まで傷がついてしまった可能性もあります。また、化膿した場合はアフターケアの問題というよりは、使ったインクが感染源の可能性もあります。こうなった場合は、抗生物質の内服が必要になることもあるので、まずは皮膚科か形成外科を受診しましょう。また、彫る側はインクを常に新しいものを使うこと、彫られる側はその場でインクを出しているかどうかを確認するのも大切です。

8・完治したあと、ずいぶんたってから発疹はかゆみが出た場合
●完治して数ヶ月から数年たったあと、急にタトゥーを入れた部分やその周辺、または全身に発疹が出た場合は、色素(インク)に対するアレルギー反応の可能性があります。アレルギーには2種類あり、ひとつは金属アレルギーのようにすぐに発疹が出る即時型。もうひとつは、花粉症のようにウィルスが体内に蓄積したことで起こる遅発型です。時間がだいぶ経過しているのにかゆみが出た場合は、遅発型のアレルギーと考えられます。この場合、ファーストタトゥーで異常がなかったとしても、2度目3度目のタトゥーで発疹が出てしまうことがあります。また日焼けをしたり風邪などで体力が落ち、抵抗力が著しく落ちた場合にも、アレルギーが発症することがあります。この発疹自体にはさほど問題はありませんが、これを引っ掻いてしまうことで炎症や化膿が起こることも。抗ヒスタミン剤の内服とステロイド外用薬の塗布をおすすえしますので、かゆみがひどい場合はすぐに皮膚科か形成外科に行きましょう。

9・タトゥーをおすすめできな方は?
●糖尿病、心筋梗塞、脳卒中の問題を抱えている方、またはそれを治すための薬を飲んでいる方にはおすすめできません。これらの病気は、血液が正常に固まる力が損なわれているからです。また、持病を持っている人以外にも、健康状態が悪い場合には施術をやめたほうがいいでしょう。それから鎮痛剤で知られる「バファリン」の中には、血液を固めにくくする成分が入っているので施術前後の服用は避けましょう。

10・妊娠中の施術は避けましょう
●妊娠中は母体の免疫力が落ちています。また、ホルモンの変動で色素沈着がおきやすくなっています。ですから妊娠中の施術は避け、出産後体力が回復する次の排卵が始まるまで待ったほうが良いでしょう。ちなみに、以前タトゥーを入れたからといって、母乳や胎児に影響が出たという報告はありません。また、生理中の施術は特に皮膚の問題はありませんが、メンタル面や入れる部位を考えて、各自で判断してください。



皮膚の専門家のお話

肌は薬や消毒液で治すよりも、
自身が持つ自然治癒力にゆだねたほうがキレイに治る

「創傷治療(傷口の治療)に関しては、さまざまな民間療法があります。もちろん、それが有効的でないとは言えませんが、現在の医療の観点からいえば、創傷治療センターでは傷口を常に潤わせておく“モイストヒーリング(湿潤療法)”をおすすめしています。医療は日々進化していますが、『肌は薬や消毒液で治すよりも、自身が持つ自然治癒力にゆだねたほうがキレイに治る』これが私たちが考える最新医療なのです。タトゥーの場合は、すり傷と同じような浅い傷です。ですから針などをきちんと滅菌し、新鮮なインクを使い、正しい深さにタトゥーを彫り、不潔な環境でなければ、特に問題が起こることはありません。タトゥーを彫る位置は、真皮の浅い部分がベストだと言いましたが、部位によって皮膚の厚さはまちまちです。それは身体を触って実際に施術している彫師さんたちのほうが、良く分かっていることでしょう。それから私のもとへは仕事上、タトゥーを消して欲しいという方もいらっしゃいます。ですから、あえてその観点からお話させていただくと、タトゥーを消すのは入れるよりも、金銭的にも時間的にも身体的にも何百倍も大変。肌を美しく保ちたいと望むなら、タトゥーを入れたままの状態が一番キレイなのです。現時点の医療では、完全にもとの肌に戻すことはできません。ですから『タトゥーは消せる』という安易な発想で入れるのはやめましょう。また、タトゥーを入れたあと皮膚に異常が出たときは、皮膚科か形成外科に行ってください。混同されがちですが、形成外科は美容を含めて皮膚の病気など主に身体の表面を診療する科、整形外科や骨や関節、筋肉などを診療する科なのです。こういうことを知っておくと、いざというときに役に立ちますよ」


NPO法人 創傷治療センター理事
脇坂長興先生
聖マリアンナ医科大学医学部卒業。医学博士。形成外科医長、講師を歴任。先天異常、再建外科、美容外科が専門。患者さんが一番早く良くなる治療を提供することを指名と考え、最前線の医療を研究する。創傷治療センターでは、創傷治療のくわしい説明やメールでの相談も受け付けている。
創傷治療センター



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